C-na Diary

しーなの もつれがちな日々

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
[ --/--/-- --:-- ] スポンサー広告 | TB(-) | CM(-)

青い便箋

子供の頃、宇部でのおはなし。

6歳から17歳まで借家に住んでいました。
父の知人から借りたその家は、町中にありながらも門構えとお庭のついた旧家で、
父以外の家族は裏木戸から出入りしていました。
玄関脇の女中部屋と思しき3畳の部屋が弟に、ワタシには南側の角の4畳半の部屋が与えられ、古いけれど家族4人が住むには広すぎるくらいの家でした。

本題はここからです。
裏庭に大きな枇杷の樹が植わっていて、その樹の向こうに、いわゆる「離れ」がありました。
我が家用の裏木戸の横にもうひとつ木戸があり、離れへはそこから出入りするようになっていました。
一部屋しかないようで、当初は独り住まいのお年寄りが住んでおられました。

ある時、そのお年寄りが引っ越して行かれ、後から親子連れが越してきました。
お母さんと、息子二人。
母子家庭のようでした。
離れにはお風呂がなかったので、週に何回かは3人揃って、我が家のお風呂にそっと入りに来られていました。
お兄ちゃんは小学校中学年、弟は幼稚園くらいの大変に無口な兄弟で、ワタシが何度遊びに誘っても出てこようとしないので諦めていました。

離れと我が家は、裏庭を挟んで向かい合わせに建っていたので、その家の様子は、枇杷の樹越しにワタシの部屋からまるわかりでした。
子供心にその家族がけっこう気になっていたワタシは、しょっちゅう観察していました。

夕方になると、髪の長いお母さんが鏡台に座ってお化粧をしている姿が見えました。
息子たちはその脇でおとなしく遊んでおり、
そして、必ず井上陽水の「心もよう」が聴こえてくるのでした。
おそらくシングルレコードだったのでしょう。
何度も何度も繰り返しかかっていました。

「さみしさのつれづれに 手紙をしたためています あなたに…」

心もようを聴きながら、お母さんはお化粧を終え髪を整え、出かけて行きました。
その後は、次の日の朝までカーテンが閉められていました。

2年ほど暮らして、その親子は引っ越していきました。
結局、その兄弟ともお母さんとも、ただの一度も言葉を交わしませんでした。

そうして
その親子がワタシに井上陽水を刷り込みました。

お年玉で、即、アルバム「氷の世界」を買いました。

今でも猛烈にリスペクトする陽水ですが
「心もよう」はワタシにとって、ある意味特別な曲。


鏡台に映る寂しげな女性の横顔
日の当たらない部屋
裏木戸を引く音


「季節はめぐり あなたを変える……」


いい時代だったな。

日々に、
匂いというものがありました。



img_1.jpg






[ 2015/10/22 18:32 ] 音楽 | TB(0) | CM(0)
コメントの投稿












管理者にだけ表示を許可する


上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。